モロ屋

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「Adobe Digital Publishing フォーラム 2011」に見る、電子出版の流れ

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2/1(火)にベルサール六本木にて開催された、Adobe Digital Publishing フォーラム 2011に参加していたので、忘れる前に感じたことをメモ。

700人以上が収容できる会場でしたが、あっという間に満員になるほどの盛況ぶりで、出版業界の意識の高さが伺えました。


とりあえず内容を軽く。


no title


KeynoteはAdobe Digital Publishing Suiteの紹介で、主にWIREDのデジタル版を成功例として、Ricky Liversidge氏が解説。


マイコミジャーナルがそこそこ詳しい。

Adobe Digital Publishing フォーラム 2011 -電子出版・電子書籍の最新事情 | マイナビニュース


この動画がオープニングに使われてました。



そして同じくDigital Publishing Suiteを使った国内作例の紹介。

凸版印刷とか出てきたりして、もうすぐそこまで来てるんだなという実感。


間を置いて、使用策定中でドラフトのEPUB 3.0詳細技術解説。

現在最新版のEPUB 2.0.1は縦書きが非サポートなので、日本では3.0に否応なく期待が高まる。


最後に株式会社G2010から、ワクワクする電子書籍と題して実際の電子書籍化についての制作プロセスやフューチャーを対談形式で。




イベントのその他詳細は他で紹介されているので置いておいて。


とりあえず感じるのは、これからの電子出版はハードウェア・ソフトウェア(コンテンツ)において二極化していくのではないかということ。



ビーワークスさんと三栄書房さんが作った、雑誌「ゴルフトゥデイ」のデジタル版は完成度がとにかく高くて、使える技術を丁度いいバランスで有効活用していた印象。




G2010さんが作った、書籍「歌うクジラ - 村上龍」は、試みはとても面白いけど果たして実用的に使えて日常に溶け込むの? という印象。



前者は、もはや雑誌ではないという認識に思えるのですね。映画や、テレビやゲームのようでいて、それとは違う新しいメディア。

だから「電子書籍っていうけどiPadの雑誌ってもはや書籍じゃないよね」っていう声はすごくよく分かる。書籍とは別の情報媒体だと思うので。

ちなみに電子出版と言うことも出来るけど、電子出版だと小説とかも含めてしまうので、何か新しい単語が必要なのかもですね。

さて、そう考えるとパソコンの前に座るわけでもなく、仲間同士で集まってiPadを見ながら石川遼のフォームを見て歓談するっていうのはありじゃないかなーと思えてくる。

Webは情報が雑多に溢れててノイジーだけど、雑誌は編集でコンテンツがまとめられてるというメリットに、音や映像というインタラクティブメディアを統合した感じで楽しい。



ただ後者の村上龍さんの本は、メインコンテンツは作家の書いた文章であって、読者が主に望んでいるのはそれだと思うんですね。

そうなると文庫の持つ携帯性だとか、文章の読みやすさであるとか、そういった部分に主軸が置かれるはずです。

表紙が動くだとか、特定のシーンでBGMが流れるだとか、確かにあったら面白いかもしれない。でも実用的に使えるか考えるとどうなのかな、と。

そういう部分はあくまでサブであって、あってもなくてもいい。BGMも、オンオフ出来るように作られているわけですし。

選択肢が増えるのはいいことだけど、最大の障壁は『iPadに何時間もかじりついて、集中して読書出来るか』という話。

一日中モニターを見つめて、外出時でもiPhoneを使いまくる自分でも「読みにくい・目が痛い・重い・机においたらやっぱり読みにくい」と思うのに、これが果たして普段から読書している人々に受け入れられるかどうか。


こういう書き方をすると、じゃあSony ReaderやKindleはどうなんだ。ということになってくると思います。


電子ペーパーは軽くて、バックライトがなく性質がほとんど紙と同じなので目も疲れない(体感済み)

でも現状、電子ペーパーは画面のリフレッシュに0.5秒ほど掛かるため、動画の再生は当然不可能。

特定のシーンでBGMというのも、そういったプログラマブルな仕様は使えません。



つまりこれからのデジタルパブリッシングは「新しいメディアとして捉えられる、インタラクティブな動きを持てる電子出版」と「単に文章がコンテンツである、小説やエッセイ等」で全くの別物になっていくのではないかと。

そして制作サイドとしても、ツールが変わってくる。


長いので「デジタル雑誌」と「デジタル文庫」と適当に略します。


デジタル雑誌


- デバイス(ハードウェア) -

・iPad&iPhone

・Android(GALAXY Tabとか)

・つまり液晶画面


- コンテンツ(ソフトウェア) -

・音や映像

・切り替えできる画像

・読者のインプットに応じた、インタラクティブコンテンツ


- 制作サイド -

・InDesign CS5

・Adobe Digital Publishing Suite

・自社開発App

・配信先デバイスによってメディアタイプは様々



デジタル文庫


- デバイス(ハードウェア) -

・Kindle

・Sony Reader

・つまり電子ペーパー(E Ink)


- コンテンツ(ソフトウェア) -

・文章

・簡単な挿絵など


- 制作サイド -

・(現在はInDesign CS5にてEPUB書き出しだけど、どちらかというとDreamweaverっぽい動きになる気がする)

・EPUB(そもそもEPUBはHTML+CSS+その他をzipで固めたもの)

・PDF


こんな感じかなあ。

少なくとも『現時点で』『実際に使われるとしたら』という前提ですが。


あと、そもそも閲覧デバイスの普及率が低すぎるので一般的に実際に普及するかというとコンテンツ以前の問題でもありますね。

ただ確実に新しいメディアが形成されていく実感があり、これはビジネスになる予感です。



デジタル雑誌は、各社色々手探りながらも前向きな姿勢が見えますね。

凸版印刷さんのヤングジャンプ・グラビア紹介がヤバかった

デジタル文庫のほうは、角川書店さんなんかも、有名書籍(涼宮ハルヒの憂鬱とか)をiPhoneで見られるように販売してたりしますが(BookWalker)、先述のとおりiPhone・iPadでは辛いので是非Kindle等で配信して頂ければ… と思うところです。

でも現状EPUB 2.0.1は横書きのみなので、EPUB 3.0で縦書きが対応して、デバイスも追従して対応したときに動きがある可能性があります。


しかしEPUB 3.0が標準的に使われるようになり、さらに最新コンテンツだけではなく過去コンテンツも配信されるというのは、まだまだ先のことになると思います。

しかも過去に買ったコンテンツを再度買い直すというのもアレです。


俺は今すぐKindleで文庫が読みてぇんだよ! という人は、そうです。自炊しかないです。


ということで、明日は「ドキュメントスキャナーとKindle3で快適デジタル文庫生活(仮)」のノウハウをお送りします。たぶん。


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え、GALAPAGOS? そういえばそういうのもあったなぁ(遠い目